やってくるチャンスに乗り「できること」を自然体で:佐藤惠子さん

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ファシリテーションへの興味

ーでは、ファシリテーションへの興味っていうのはどこからでてきたんですか?
佐藤:元々、講師として人に教えるっていうのは恥ずかしいところがあったんです。「私なんて」みたいな。私は、事務局として段取りをするのが好きだったんです。時には、みんなが楽しそうにワイワイ話をして、倒れそうな人がいたら、サポートするみたいな関わりを、外からするのが好きだったんです。それが楽だったんですよね。私でもできるみたいな。でもそれだけで場が変わっていって、そこにちょこっと関われるっていうのが、楽だなあというのが、はじまりですね。本来、ファシリテーターっていうのは、ちょこっと関わるくらいでいいんですよ。

そう考えると、私が今まで、やってきたことってファシリテーターだったんですよ。それが、スキルとして求められるのであれば、ちゃんとそれが形としてわかるといいなあと。そんな気持ちで勉強を始めました。コーチの勉強もしたんですけど、1対1はちょっと苦手な感じがしましたね。ちょっと責任が出る感じが(笑)でも、多数だと、みんなでやれば怖くないって(笑)

ファシリテートの勉強されている方からも、けっこうほめられるんですよね。自然体でいるっていうか「でくのぼう」っていうか、そういうことが私できてるみたいで。ある方からは「自然体でやればいいっていうのは、こういうことなんですね。初めて理解できました!」って言われて、その時は嬉しかったですよね。どこまで肩の力を抜くかっていうことなんだと思います。

ー私自身は、佐藤さんのファシリテーションって拝見したことがないんですけど、普段のお姿からも自然体っていうのは、すごく感じます。
佐藤:昔は緊張しいだったし「よく見られたい」とか思ってましたよ。でも、それこそさっきの話にもあった「それはあなたに見る目がなかったのね」って思えるようになってから、自然体でいられるようになりましたね。

ー役職とか職名とか付けてしまうと、最初に「なりきる」っていうステップがでてくるような気がするんですよね。「なりきらなきゃいけない」みたいな。それがそもそも間違いなのかもしれませんね。
佐藤:そう、「なりきる」というよりも、立場が人を作るんですよ。そういう役割に持ち上げられたら人はそうなるんですよ。なりきらなくてもなるんです。その人は、選ばれてるんだから。

ー何かの名前がついたから、それをしなきゃいけないのではなくて、その空いたスペースを埋めるような型になるって感じですね。
佐藤:あんまり自分でしようと思うと、周りがまったくみえなくなるので、しようと思わなくていいです。自分のことしかみえなくなっちゃいます。たまに「何もしないっていうと放置ですか?」って言われる方もいますけど、いやいや、何もしないっていってもするでしょ?何かをね。することは必ずくるから。そこが役割に縛られすぎると、その来るものを見逃しちゃいますよね。

ー今日のお話、全体につながっているような考え方だなと思いました。
佐藤:来たことだけやってるから、楽ちんですよ(笑)

ーたしかに(笑)。

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今感じている流れ 会社に対しての思い

ーでは、今後の話なんですが、「できること」をやられていく中で、今後どんなどんな流れがきそうですか?
佐藤:それでいうと、今年、企業研修もファシリテーターでやらせてもらう機会が多かったんです。そうしていると、なんかこの頃、私に会いたいとか、一緒にこういう事やりたいって話をいただくことが多くなってきて今は、そういう流れを感じますね。

一方で私自身として、今、興味がでてきているのは、うちの法人に対してです。なんていうか、今変わるタイミングなんだろうと思うんですね。会社が、やっと黒字に転じた形になってきたので、更に形としてきちっとした組織に整えたいなという思いがでてきました。そう思ってると、職員の中からも「やりたいことがあるんです」みたいな事を言ってくれる人がでてきたりして、なんか新たな形になりそうだなと思っています。

なので、これからの興味は、会社にもう一回向けたいという思いがあります。面白い形になって、人材もそろってきましたし。うちの会社のいいところは、ほんと皆やめないんですよね。楽しいって言って働いてくれています。

そんな流れがあるので、今まで少し影の存在になっていたのを、もっと表に出て行く形にしようかなと思ってます。

ーそれがさらに整ってくると、障害者支援のフィールドでどんな事ができそうですか?
佐藤:今、企業が障害者を雇わなければいけないって流れが前より高まってきているんですね。でも、なかなか福祉と一般社会の観点から、育成できる人って少ないんだと思います。

そんな中、私達の中には就労支援員として何人か企業出身者の人がいるので、そこの架け橋になれるかなと思ってます。社会人としての心得だったりとか、具体的な事をお伝えするのは、私達ができることなんじゃないかなと思ってますね。福祉の視点だけだと、若干質感が違うんですよね。

ーその他にも、会社としての特色はあったりするんですか?
佐藤:うちの事業所って、三障害(精神・知的・身体)の人達を一緒に扱っているんです。普通はそこを分けるんですけど、私たちはそれをせずに、一緒に学んでいきますので、来たい人は来てくださいっていう感じにしているんです。だからこそ、汎用性があるんですよね。

よく同業の方からは「一緒にしていると、支援員の方は大変でしょうね」って言われるんですけど、私にはそこがよくわからない(笑)。実際、うちの職員は、たのしそうにやってますし、私たちは、それが当たり前だと思っていますからね。もちろん、国の支援の基準としての分け方はありますけど、それ以外の枠はないとおもっています。一つ一つの障害を分けるっていうよりは、人としては一緒だとそういうことですよね。結局は、その人がどう在りたいか、生きたいかってことなので。そこを分類して管理することで、逆にすごく難しい事をしているような感じもありますよね。

ーなるほど!「枠を分けないと管理する側がきついのではないか?」っていう視点は、あらゆるシーンで、スタンダードになってますが、そもそもそれが間違っているのかもしれませんねー
佐藤:それって、その人の存在に問題があって、きつい人の世話をしてるって発想に感じるんです。「障害がある人に問題がある。だから問題に応じて、対処しなければならない」って言うこと自体が私には意味がわからないですね。自分で宣言する分にはいいですけどね。でも、「この人に問題がある」っていうのは、それを言ってしまう会社に問題がある気がしてしまいます。

ー問題がある、解消しなければならない。それがあるのであれば、解消してからでなければ、受け入れられない。そういう構図ですよね。それを成長っていう言葉で置き換えてるような気もします。
佐藤:そこはお互いに歩み寄りだと思うんですよね。こちらも歩み寄るし、会社の方も歩み寄ってもらう部分があると思いますね。

ーそれが一般化するといいような気がしていますが、いかがですか?
佐藤:んー、でも私はそこを必ずしも、一般化しようとも思っていないです。そういう自由な発想を選ぶ人もいるし、うちの会社にぴったりな人だけくださいっていう人もいるし、選べるから色々とあってもいいんじゃないかなと思いますね。中には、普通の会社員と一緒に扱ってほしいっていう当事者もいるわけですよ。同じようにしてほしいってね。

ーそうなんですね。
佐藤:そうなんです。今は選べる時代になってきたんです。前はそういうところがゼロだったんですから、それに比べたらいい時代になってきたと思います。

今もっている夢

ー最後ですが、佐藤さんの夢を伺ってもよろしいですか?
佐藤:けっこうシンプルなんですけど、みんなが楽しく働いてるような状況が私の目指す幸せなんだと思います。だから、私の役割は、みんなが幸せだって感じられる瞬間はすでにいっぱいあるんだよ!って事を広めるいくことだと思います。

全員っていうよりも、そのへんの質感が合う人が、私によってきてもらえれば、伝えていきたいって思っています。

ー今後もご活躍を応援しております!!今日は、ありがとうございました!ー
佐藤:こちらこそありがとうございました!

編集後記
佐藤さんのお話を聞いていると求められるがままに流れにのって、自然体で「できること」を掴んでいく。そんな印象を受けました。そもそも、現代人は”なにかしなければならない”という幻想にとらわれすぎているのかもしれません。機会は、誰にでも均等に降り注いでいて、それを掴むかどうかの違いである。そんな風に感じました。
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