GROWモデルとは、世界的コーチであるジョンウィットモア氏が開発したコーチングにおける目標達成のための原型のこと。パフォーマンスコーチングにおける重要なモデル。
前段の考え方として
ジョンによると、パフォーマンスを向上させるために必要なことは「意識すること」と「責任感」であるという。
意識することで、自分の周りで起きている物事をより広い視野で認識し、そして関連する物事まで見極めることができるようになる。つまりは、意識は質の高い関連性のあるインプットにつなげることができる。
責任感は、自分の考えや行動に対して、心から自分に責任があることを認め、自分で選択して責任を受け取ると、コミットメントが高まり成果を向上させることができる。
そして、これらを喚起するために質問という手段がとても有効的であると語る。コーチングでは質問を通して積極的で鋭い思考と注意と観察を喚起し、意識と責任につなげることができるとのこと。
その効果的な質問の順序として登場するのが、今回のGROWモデルである。
できれば、このすべての段階を経ることが望ましいとされる。
GROWモデルの詳細
G-目標(Goals)
何を望んでいるのか?
短期的および長期的な「目標」およびセッションの「目標」を設定する。
現実(R)からではなく、目標から聞く理由としては、アウトプットが凡庸で控えめで非生産的になることを防ぐためである。
R-現実(Reality)
何が起きているのか?
「現実」を探り出すための現在の状況をチェックする。
O-選択肢(Options)
何ができるのか?
「選択肢」と代替戦略案または行動案
W-意思(What,When,Who,Will)
何をする意思があるのか?
「何」を「いつ」「だれが」するのか?そしてそれを実行する「意思」
使用上の注意点
ジョンは、著書の中でこのように語っている。
この順序の頭文字をとってGROWという覚えやすい形になるので、私はこれをよく使う。しかし重要なことは、「意識」や「責任感」とそれを生み出す質問のスキルという文脈を離れて行うGROWはあまり価値がないということだ。こうした覚えやすい合言葉はビジネス研修に氾濫している。(中略)これらはビジネスの万病に効く特効薬であるかのように提案されたり誤解されたりすることがあるが、決してそういうものではない。これらは特有の状況においてのみ価値があるのであり、GROWの背景となるのは「意識」と「責任感」である。
はじめのコーチング:ジョン・ウィットモア p97-98
読者がこの本からひとつでも学ぶことがあるとすれば、それはGROWではなく、「意識」と「責任感」であってほしい。そういった上で、GROWの順序に従って効果的な質問をすることを私が勧める最大の理由は、とにかく効果があることだ。
日本における使われ方の疑問点
これは私が感じていることであり、他の人が指摘しているのをみたことがないのですが、Googleで下記のように検索すると面白い現象を目にすることができます。
日本語での検索だと、GROWモデルの説明を階段状の山登りのように説明するスライドが多く出てきます。一方で、海外のサイトだと階段状に登るようなモデルはほぼ見当たらず、サイクルやプロセスとして捉えるほうが多いように見えます。これはなぜなのか?
先輩コーチに伺ったところ、コーチ21(現:コーチA)が日本に概念を輸入した段階で、山を登るようなニュアンスを入れたのではないかとのことでした。日本では当初のころからこのような表記だったらしいとのこと。
私としては、山を登るような概念にすると、必ずリアリティが一番下に来るため現状を否定するような考え方につながる恐れがあるように思います。別に現状が悪いわけではないのです。そのため、使う際は横並びで表記するようにしています。