以前、共感と同感の違いについて書きましたが、聞き上手と言われている人がその前段に行っていることがあります。
それは、受容です。
ここは聞き上手を語る上では避けて通れないかなと思いましたので、私の失敗も踏まえて書いてみました。
どこまで学術的に正しいのかはわかりませんが、実務上の参考にはなるかなと思います。
受容とはなんぞや?
カウンセリングでいう受容とは、相手の言葉・感情などを、自分の価値観で批判したり評価をせず、そのまま、ありのままに受け入れることであると言われています。傾聴の祖 カール・ロジャーズ さんが言い始めたとのことです。
英語でいえば、アクセプタンス(Acceptance)という言葉になります。
”受けいれる”と”受け止める”の違い
ここで、受容という言葉の解釈上の注意点をあげてみたいと思います。
受容という言葉に潜む罠
カウンセリングを学びたての頃は、受容と聞いて「肯定も否定もなく、相手のすべてを自分の中に”受け入れ”なければいけない」と、思っていました。
人のお役に立ちたい、なんだか解決してあげたい、という思いからそう考えたわけですが、なかなかどうして…。
これを全力でし続けていると、普通の人は精神がもたないでしょう。すべてを自分の中にいれてしまうというのは、それほど大変なことなのです。そして、そのストレスは相手にも向かってしまい、結果、誰にとっても良いことにはならなかったりします。
前段の工程としての”受け止める”
では、どうしたらよいのか?
実は”受け入れる”の中には、ショートカットされている工程があります。当たり前すぎて、普段は飛ばしてしまいがちなのですが、”受け入れる”前に重要視すべき観点なのです。
それが”受け止める”という工程です。
つまり、伝わってきた情報を解釈する前の情報の受け取りの部分ですね。
もちろん深く相手の話を理解していくためには”受け入れる”も必要になるのでしょうが、その前段の”受け止める”部分も同様に積極的に扱ってみようよ、というのが、今回伝えたい観点であり、そこを意識することこそロジャーズの言った受容のニュアンスに近い部分なのだと考えます。
“受け止める”能力の効用
「”受け止める”部分?当たり前にしてるんじゃない?」と思われるかもしれません。
ほんとそうですか?
なにか「しながら」人の話を聞いてたりしませんか?
相手の話をきいて、いきなり「何を回答しようか」必死に考えてたり言ったりしてないですか?
相手が話しきるまえに、しかめっ面で「うーん」と唸ったりしていないですか?
相手の話すことすべてに賛同し続けてたりしてないですか?
“受け止める”という行為は、解釈以前の部分で、まず相手が発言したこと自体を肯定(意見の内容ではなく)することです。つまり、やり取りのコネクションを確立するベースになる行為といえます。そのコネクションをきちんと確立していくことで、相手には深い部分での安心感や信頼感が芽生え、その中でやり取りを行うことができます。それが聴いてもらった(言ったことを受け取ってくれた)と感じることにつながっていくわけです。
つまり、答えを返す以前に「相手が喋ってくれている」事自体をきちんと受け止めているか?という点が想像以上に重要なわけです。
それは、「話してくれてありがとね」という前向きな言葉じゃなくても、「こういう話であることはわかった」とか、聴いているときの向きだったり態度でもよいのです。「はい、ちゃんと受け取りましたよ!」と態度で示してみることです。これだけでもだいぶ違うんですよ。ほんとに。
ここをせずに様々なスキルを駆使しても、相手は「結局、否定されてしまったなぁ」と思ってしまいます。
理解できなくても”受け止める”ことはできる
もちろん話している内容が理解できないときも多々あることでしょう。そんなときも、まず”受け止める”フェーズを意識することは、必要以上の被害から自分を守る手立て(同時に相手も守ってることになる)としても機能します。
「相手が喋ってくれている」事自体は”受け止める”けど、考え方は”受け入れない”ということもありなわけです。
ここの選択が冷静にできれば、揉め事につながる可能性も減ってきて、両者にとってよい状態につながることも多いのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、受容について書いてみました。そもそもacceptanceという単語には「受動的に」というニュアンスが含まれているので、今回書いたことは大きく間違ってはいないのかなと感じています。「受動的に”受け止める”」というような感じです。
機械的な受け取りは、acceptですからね。
そんなことも思いつつ。