弱さから始める

以前も書きましたが、最近は対話的なコーチ活動も続けながら、障害者就労支援のほうも忙しくしています。

今、関わっている方は、いろんな形で障害者認定(社会モデルに即して”障がい”ではなく”障害”と記載していきます)を受けている方たちなのですが、彼ら彼女らと関わる中で、自分自身もうつ病で苦しんだ過去とも照らし合わせながら働くということについて、そして社会について考える日々です。

世の中には多様な障害が存在しているわけですが、多かれ少なかれ、そこには何かしらの精神の不安定さが関わってきます。そららも包括しながら社会への移行のサポートを行っているわけです。

一方、コーチングのニュアンスでいうと精神的な不安定さがある場合はセッションは受け付けないというスタンスになります。(本サイトでも申し込み時に確認を行うようにしています。)

その理由として、コーチングは、受ける方(クライアント)が自分自身の手でよりよい未来を切り開いていくための思考のプロセスコンサルティング的な支援であり、回復を目指すようなセラピーやカウンセリングとはスタンスが異なるためです。

が、しかし、心の不安定さというものは、きれいにぱっくり割り切れるようなモノなのか?というとなかなか難しいところがあります。

ずっと臥せっているような状態であれば素人目にも判断はしやすいですが、そう単純な話ではありません。逆に安定されている方だったとしても意識の成長という視点を考えたときには、それまでの世界観を乗り越えていく際に不安定となりパフォーマンスが低下することもあります。そのため、それを病態というのか一時的な心のステイトというのかは、非常に難しいところでもあるな、と思うわけです。

ただ、大事なのは、これらの不安定さを「知識の上では分けられるかもしれない」が「本来は分かれていないもの」であると認識することなのだと感じています。

つまり、精神の不安定さというのは、”良し・悪し”のどちらかから選ぶようなものではなく、人の意識の中にいつも存在している不可分なモードのようなものなのかもしれない、という観点を忘れてないことかと。

いつもいつでも我々は両方のモードと一緒にいて、なくなるようなものでもないし、なければいいものでもないと。そして、その上でそれを支援者として扱えるのか、を見定めていくことなのかなと。

むしろ私個人としては、精神の不安定性が現実に直面していく中でユニークな形に昇華されて新たな安定に向かっていくことのほうが、自然な発生的在り様のようにも思えるし、社会や文化のオリジナリティはそういう”弱さ”から常に創造されてきたような気もしているわけです。現代で”弱さ”とくくられるものには、それくらいの可能性があるのではないかと思っています。

松岡正剛さんが千夜千冊の中で下記のようなことを言っていますが、弱さの中にとてもユニークなものがあるのだという視点は大好きです。

“ われわれは誰だって、いつだって、精神疾患を出入りする淵にいる。不安、憂鬱、迷妄、妄想、意志薄弱、意欲の減退。食欲不振、倦怠、トラウマとフラッシュバック、仕事放棄、引きこもり。みんな、このうちの何かと一緒にいる。淵に近づかなかった者なんて、ほとんどいない。
 このところ先進諸国の巷には「人格の病」、「感情の病」、「不安の病」が乱れとぶ。なかでも「うつ病」が会社でも学校でもふえている。先だって大企業の人事部の知り合いに聞いたところ、データ上では一割ちょっと、実際には三割ほどが「うつ病」ですよと言っていた。また、これも知り合いの産業医に尋ねてみたら、たいていの企業や役所はDSMオンパレードですよ、統合失調症、パニック障害、ヒステリー、家族暴力、ストレス過剰、双極性障害、解離、PTSD……みんなありますと言っていた。DSMについてはあとで述べる。
 なぜ、そうなったのか。もっと大きな「文明の病い」が広がっているのか。あるいは社会のコミュニケーションのどこかに機能不全がおこっているのか。それとも、アメリカ精神医学会のDSMが心の病いの症状を分類認定しているからなのか。それならわれわれは、香り高い悲哀にもう浸っていられないのだろうか。原因が特定できないだけに、気になる問題だ。”

引用元:千夜千冊1522夜 生夜編:それは「うつ」ではない どんな悲しみも「うつ」にされてしまう理由アラン・ホーウィッツ&ジェローム・ウェイクフィールド

そんな弱さについて見つめ続けるところから常に始めていきたいと思っています。

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