ムーミンから学ぶ困難の乗り越え方

先日、こんな記事をみました。

The Marginalian

“It’s a pity that exciting things always stop happening when…

私はまったく英語が読めないのですが、DeepLさんの力を借りて翻訳しながら読みました。
chromeを使ってる方はdeepl拡張プラグインを使うと更に便利ですよ。

このブログ記事は、トーベ・ヤンソンの「ムーミン谷の冬」という作品を通して、自分ではコントロールできない物事に対しての捉え方、乗り越え方について解説してくれています。本記事でも、最初のブログ記事と同様の箇所について書いてみたいと思います。

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あらすじ

冬眠するはずの冬に起きてしまったムーミントロール(以下、ムーミン)。あたりは見覚えのある場所なのに全く違う状態。そんな初めての環境の中でムーミンが様々なことを体験していきながら、”冬”という未知のものに慣れ、好きになりかけてきた物語終盤、吹雪に見舞われます。冬があける直前の嵐なわけですが、ムーミンはそんなことは知りません。

はじめは高をくくっていたムーミンでしたが、楽観的な予想ははずれ吹雪は激しさを増します。目の前が塞がれ、方向や時間すらもよくわからなくなりながら、ムーミンは全然違う方向に進んでしまいます。次第に、好きになってきたはずの冬が自分を試しているのだと思い込み、怒りを覚え、吹雪の中で叫びます。ですが、それも誰にも届かない。

怒りが頂点を越えたときにムーミンは抗うことをやめます。彼は吹雪に背を向けて、ふかれるがままに我が身をまかせました。すると彼は吹いている風が温かいことに気づき、波にのるようにスリルを味わいながらするりと吹雪を超えてしまいます。吹雪を脱したあとの彼の言葉が印象的です。

スリルのあることって、それがもうこわくなくなって、ようやくたのしめるようになったころは、きっと、おしまいになっちゃうんだなあ。ほんとにつまんない“

“It’s a pity that exciting things always stop happening when you’re not afraid of them anymore and would like to have a little fun.”

日本語部分 新装版 ムーミン谷の冬(Japanese edition) kindle版 位置No 1371/1853

超えていくということ

この部分、私も感銘を受けて日本語版のムーミンを買ってしまいました。ところが、全体の中でこのパートを読むととても不思議な気分になります。物語としては唐突に描写が始まるからです。流れとしては、この前段に一つ乗り越えた物語がでてきます。その結果、ムーミンは冬のことを少し好きになるわけですが、そこを裏切られるわけです。

物事ってそういうものかもしれません。少し慣れてコントロールができるなんて思ったときに、現実を突きつけられちゃったりするわけです。そして、そこに対して抵抗し怒りも覚え、それでもどうにもならず、最終的にそのままを受け入れてそのこと自体を楽しみはじめてみると、終わりがきちゃう。

どんなに苦しいことでも、抗えないことを受け入れきっていくことが大きな開かれた道なのかもしれません。そう軽々といえない事柄もいっぱいあるわけですが、乗り越えきるとはそういうプロセスなのかも?と思うだけで少し心が安らかになった私がおりました。

作者はなぜこのパートをいれたのか?

とても示唆に富む表現であるものの、なぜにこのパートが挿入されたのか?
調べてみると、ムーミンの公式サイトで下記のような記述を発見しました。

でもその一方で、過熱する「ムーミン・ブーム」は、本来自分を画家であると考えていたトーベから絵画制作の時間を奪い、代わりに締め切りのプレッシャーと、山のような契約書、自ら行ったすべてのキャラクターグッズやムーミンを使ったプロモーションの監修、打ち合わせにつぐ打ち合わせ、メディアからのインタビュー、世間からの激しい毀誉褒貶をもたらしました。彼女は次第に疲弊し、ついにはムーミンを憎むようにさえなりました。そんな頃に出会ったのが、後半生のパートナーとなるグラフィックアーティストのトゥーリッキ・ピエティラでした。
トーベはトゥーリッキとの交際から、自身が倦み疲れきっていた見知らぬ世界、自分が有名人であり、自分の書くものに何百万人もの読者がいる世界にどのように向きあうべきかについて、大きな示唆を得ました。その体験をそのままムーミンの世界に置き換えて書かれたのが、冬眠をするムーミントロールが、まったく見知らぬ世界である「冬」と初めて向きあう姿を描いた「ムーミン谷の冬」です。

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私が新聞連載の締め切りやら印税のことやらに、いくらがんばっても、いつも苦しめられるように、冬に散々な目に遭わされるムーミントロール。難しいだろうけど、そんな風に書いてみなさいよ、とトゥーティ(筆者注:トゥーリッキの愛称)が言ったのです。物語はムーミントロールが自己を解き放ち、ある意味自分の顔を獲得するという作品になったのでした。
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ボエル・ウェスティン/畑中麻紀・森下圭子訳2014 講談社「トーベ・ヤンソン-仕事、愛、ムーミン-」P381

引用元:トーベヤンソンについて

終盤のこの流れそのものが、彼女自身がムーミンそのものの制作過程で苦しんできたこと、それを乗り越えことの体現とも言えそうです。そういう意味では、ただ冬を好きになるで終わってはいけなかったんだなと。

みなさんもよかった読んでみてください。
他の部分も含めて、哲学的な示唆に富んでおりとてもおもしろい作品でした。

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