『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【3】~発達理論でコーチングが進化する3つのポイント~

アメリカのジョン・エフ・ケネディ大学で成人の意識の発達理論を学び、『なぜ部下とうまくいかないのか』(日本能率協会マネジメントセンター)を著した加藤洋平さん。※現在は、オランダのフローニンゲン大学の大学院へ留学中。

コーチングとは、クライアントさんに寄り添い、その意識の発達を促すものであるという観点でとらえるなら、加藤さんが学んできた発達理論はコーチング業界に、非常に画期的なフレームを提供してくれるものと言える。そんな加藤さんが、どのようないきさつで発達理論と出会ったのか、また、コーチングと発達理論、その未来と可能性を聞いてみた。対談4回シリーズの第一回目。

2017年 Life with Coachというサイト上で公開していたものを、こちらで公開しております。

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◆インタビュアー:越智孝之

◆対談者:溜 香世子(アウェアーズ合同会社代表)

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※過去の記事はこちら

『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【1】~人生で雷に打たれる瞬間~

2017.01.10

『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【2】~コーチと発達理論~

2017.01.10

発達理論で拡張するコーチングの意義

“発達理論を学んで以降、地に足が着いたサポートができているという感覚になって来ているのを感じています(溜)”

–では、発達理論がコーチングにどう関わってくるのか。どう活かしていけるのか、というところについて、お二人はどのようにお考えでしょうか。–
加藤:これは、溜さんの考えがすごく参考になるかなと思っています。溜さん、もしよろしければ、まず溜さんから、コーチングにおける発達理論の可能性や活用の方法を含めて教えていただければなと思います。

溜:私は人の意識ってこんなステップで上がっていくものだという知識、まぁ、ロバート・キーガンの理論なんかは、専門的に学ぼうと思えば深くて限りないんでしょうけど、ある程度でも発達段階2から5までという理論的な知識や感覚を、ものさしというか、理論的なスケールとして持っていると、セッションの見立てにかなり効果的に使えるなと感じています。

その理論的なスケールを持ちながらコーチングで人の人生に寄り添っていくのと、スケール無しで寄り添っていくというのは、大きな差が出てくると思ってるんですよね。

私自身、当初はそういったスケールが無いなかでコーチングをやっていて、そのクライアントさんがコーチングを受けてくるプロセスの中でどんなふうに変化しているのか、そういった変化がその方の成長とどう関係してるのかどうか、よく分からない部分がありました。もし目標達成に軸を置いたり、その時々のテーマに対する答えが見つかったとしても、それを繰り返すだけでは果てしない感覚もあり、長い目で見た時に、本当の意味でその方の支援になっているのか疑問に感じていました。

そんな時に発達理論と出会って、意識の発達という一つの確かな軸を得られたと思ったんです。なぜなら、発達理論のスケールを見立ての一つとして持つことで、その方の段階に見合った効果的な関わりを、意識して支援できるようになったからです。発達理論をベースにして見立てれば、コーチがクライアントさんに取るべきアプローチは段階によって変える必要があるし、これを見誤るとコーチングがうまくいかないばかりか、クライアントさんの成長を妨げかねません。

例えば、それまで有識者の理論や理念に沿いつつ、会社の目標に向かって一直線に進むようなことを意欲的にやっている人をコーチングで支援していたとします。でも、その人は、ある時から「本当にこれでいいんだろうか?」みたいに段々モヤモヤとしてくるわけですよ。他者の理論とか会社の目標を追っているだけだと、モチベーションが下がってきたり、「何か自分はハッピーではない」ということに徐々に気づいてくるわけです。そこで葛藤が起こるわけです。

そのときに意識の発達理論っていうスケールがないと、「コーチングがうまくいっていないのでは?」となってくる。

でも、発達理論の目線でいえば、それは他者依存段階の段階3から、徐々に自己主導段階の段階4的な要素が芽生えてきている、というような風景が見えてくるわけですよね。そうなると、今度は新たに芽生えてきた、その方自身の持論や価値観が他者や外部の評価に影響されずに描き出されてくることを、確かな感覚を持ちながらコーチが支援するということができるわけです。発達理論という観点から、クライアントさんの意識に起きていることの本質が見えてくるっていうのかな。

そういうことで、発達理論を学んで以降、地に足が着いたサポートができているっていう感覚になって来ているのを感じています。

加藤:溜さん、ありがとうございます。溜さんからバトンを譲り受けてもよろしいですかね。

溜:もちろんです。

発達理論でコーチングが進化する3つのポイント

“コーチが発達理論を学ぶことによって、クライアントを支援する理論的な枠組みを構築することができる”

加藤:溜さんのお話ししてくださったことの中に、発達理論の可能性とコーチングに関する可能性があるなと思っています。私が考えているのは、溜さんのお話をもとにすると、三つの側面があると思います。

一つ目が理論的側面での可能性
二つ目が実技的・実践的な側面での可能性
そして最後三つ目は、実存的な側面での可能性
というのがあるのではないかと思っています。

1、理論的側面での可能性について

一つ目の理論的側面に関して言うと、溜さんがお話しして下さったように、コーチ自身が自分を見るものさし、あるいはコーチがクライアントを見るものさしとして、発達理論が機能すると思います。コーチが、自分やクライアントの発達段階を見立てる際に、発達理論は非常に有益な視点を提供してくれると思います。

そもそもコーチングは、先ほど溜さんがお話しして下さったように、色んな種類のものがあると思います。目標達成を支援するビジネスコーチングにせよ、片付けを支援するパーソナルコーチングにせよ、色んなタイプのものがあると思いますが、何が共通しているのかというと、それは「変化」だと思うんです。間違いなく、目標を達成することに関しては、現状に対して何かしらの変化がクライアントの中で起こることによって、目標が達成されていくのだと思います。また、片づけを支援するパーソナルコーチングに関しても、部屋が汚い今の状況からきれいな状況になる、という変化がそこに含まれていると思うんですね。発達理論というのは、まさにこうした「変化」を扱う理論、あるいは学問領域なんですね。

発達理論を学べば学ぶほど、変化を捉える分析の視点や、変化をより支援していくような理論的な枠組みを獲得することにつながると考えています。そのため、コーチが発達理論を学ぶことによって、クライアントを支援するための理論的な枠組みをきちんと構築することにつながると思います。これが一つ目の理論的な側面での可能性です。

2、実技的・実践的な側面での可能性について

そして、二つ目の実技的・実践的側面というのは、まさにこの理論的なものと両輪になっています。やはり見立てがあるからこそ、そして、しっかりとした理論があるからこそ、深い支援や深い関わり合いができると思うんですね。例えば、「目の前のクライアントは、現在どのような発達段階にいるのか」ということや、「それでは、そうしたクライアントに対して、どういうふうに介入していくのが有効なのか」ということを考えるためには、やはり知識が必要だと思います。ですので、コーチが発達理論を学ぶことは、コーチングの実践力を高めることにつながると考えています。

3、実存的な側面での可能性について

最後の実存的側面というのは、溜さんもお話ししてくださったように、例えば発達理論をもとにしたコーチングをすればするほど、コーチ自身の中で、コーチとしての自分の存在を深く内省する必要に迫られると思います。そうした内省を通じて、これまでのコーチとしての自分の在り方や支援の方法について、新たな気づきが得られるのではないかと思います。そして、そうした気づきによって、コーチの在り方や支援の仕方が変わってくると思うんですね。コーチのあり方や支援の仕方が変われば、当然ながら、コーチングセッションでの自分のプレゼンスが変わってくることにつながると思います。

実存的なところでの変化が、コーチの中で起これば起こるほど、それがクライアントに対して与える影響というのは、やはり大きなものがあると思います。まさにそうした影響は、コーチの内面的成熟がクライアントの成熟に繋がる、という考え方を表しています。自分の中で、実存的なレベルで変化・変容が起これば、クライアントが雷に打たれるような触媒としての役割を、コーチが担えるのではないでしょうか。そうした可能性があるかなと思っています。

–ありがとうございます。雷にまで繋げていただいて。–
溜:素晴らしいですね。あともう一つ、プレゼンスという意味で思い浮かぶことがあるのですが、コーチングの礎というか、コーチとしての信念のようなものに、「人はもともと想像力と才知に溢れ、欠けることのない存在である」、という文言があるんですね。欠けることのない存在、ホールな存在なんです、という人間観がベースにあるのですが、その裏付けになる理論は、コーチである私たちは知らないわけです。なぜ、欠けることのない存在なのか?欠けることがないって一体どういうことなのか?ということを飛ばして、とにかくそうなのだ、というような具合です。

意識の発達理論は、人はこういう過程をたどって成長していくものであるということが理論的に語られている。それを学ぶことによってきちんと頭でも納得しながら、欠けている欠けていないというよりも、それぞれの段階に特有の特徴や傾向があるということ、その上で、どんな段階に意識の重心があれ常に「成長しつつある存在」なのだっていうことを前提とした、そんなあり方で関わることができるって思うんですよね。

なぜ部下とうまくいかないのか』著者 加藤洋平さんインタビュー【4】~これからの時代の”仕事”とコーチング~

2017.01.10

悩みを越えて成長していこう!


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