『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【2】~コーチと発達理論~

アメリカのジョン・エフ・ケネディ大学で成人の意識の発達理論を学び、『なぜ部下とうまくいかないのか』(日本能率協会マネジメントセンター)を著した加藤洋平さん。※現在は、オランダのフローニンゲン大学の大学院へ留学中。

コーチングとは、クライアントさんに寄り添い、その意識の発達を促すものであるという観点でとらえるなら、加藤さんが学んできた発達理論はコーチング業界に、非常に画期的なフレームを提供してくれるものと言える。そんな加藤さんが、どのようないきさつで発達理論と出会ったのか、また、コーチングと発達理論、その未来と可能性を聞いてみた。対談4回シリーズの第一回目。

2017年 Life with Coachというサイト上で公開していたものを、こちらで公開しております。

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◆インタビュアー:越智孝之

◆対談者:溜 香世子(アウェアーズ合同会社代表)

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※一回目の記事はこちら

『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【1】~人生で雷に打たれる瞬間~

2017.01.10

雷に打たれる経験

“使命のようなものを実現するときのエネルギー。そうしたものと本当に出会ったのであれば、途轍もない力が湧き上がってくる”

溜:今の話を伺ってると、コーチングで経過する一連のプロセスが一瞬のうちに起こった、みたいな感じに聞こえました。

コーチングでは、まず「クライアントさんは何を願っているのだろう?」っていうことを導き出すところから初めて、「じゃあそれが実現したらどうなるのか?どんな気持ちになるのか?」というようにゴールをイメージし、そこに向けての実際のアクションを決めるというような支援の仕方がありますが、まさにそのプロセスそのものだなと。

本当に何かこう、人がダイナミックに行動を起こしたり、インスピレーションを得て次のステージに移っていくときってこれくらいのパワーがでるものなんだなって・・・改めて加藤さんの話を聞いて、スゴイなって思いましたね。

加藤:溜さん、それはありがたいですね。確かにそうかもしれないですよね。私たちは一人一人、何か使命的なものを持っていると私は思っていて、そうしたものと出会った瞬間に、強力なエネルギーが私たちの中で湧き上がるのだと思います。自分の使命のようなものと本当に出会ったのであれば、途轍もない力が湧き上がってくるのではないでしょうか。

溜:そのエネルギーを、私も自分自身の体験に振り返って思い出しました。ちょうどコーチングと出会った頃、私はCTIという養成機関で学んだのですが、基礎コースという最初のコースで、コースリーダーのデモ・コーチングを見たんです。

その時に、私は雷に打たれたんです。心が震えるような対話。これは絶対にやれるようになろうって思った瞬間を未だに鮮明に覚えています。そこから例えば、加藤さんみたいに分かりやすく海外に渡るとか、そういうのは無いんですけど、以降ひたすらコーチングをやり続けてきたっていう道があるわけです。だから、やっぱり衝撃的に雷に打たれるような出会いっていうのは物凄くパワフルですよね。

加藤:本当にそうですね。

“私たちは雷に打たれた人から影響を受ける。その影響を受けて自分にも雷が振ってくる回路が開くんじゃないかと思っています”

–今、二人の話を聞いていて、私はコーチとして、そういう雷に打たれるような体験をクライアントさんにしてもらいたいっていう気持ちがあるんだ、ということに気づきました。かくいう私自身が、溜さんに人生を動かしてもらったんです。ここ最近は加藤さんからも非常に影響を受けている自分がいて、二人がこう雷に打たれたことを聞いていると、何というか、論理的に考えたステップ感を超えた巻き込みが、他の人を動かしていくのにすごく重要なような気がしています。–
加藤:なるほど、雷に打たれた体験というのは、論理を超えた巻き込み力のようなものを生み出すかもしれませんね。

–色んな人の人生を動かしていく、すごい原動力になっているわけですよね。–
加藤:確かに、そうした原動力になるかもしれませんね。

–そんな雷に打たれた人たちが、絡み合っていくことで、また違う人が雷に打たれることがあるのではないかと感じています。–
加藤:まさにそうだと思いますね。今こうやって、 溜さん、越智さんと話をさせていただいているのも、そうした複数の要因が絡み合った結果だと思います。おそらく、各人それぞれ固有の雷に打たれる現象というのが存在していると思っていて、もし今のところ雷に打たれていなかったとしても、私たちは雷に打たれた人から影響を受ける、ということがあるのだと思います。雷に打たれた人から影響を受けて、自分にも雷が振ってくる回路が開くのではないか、と私は思っています。

溜:面白いな、その発想は。

加藤:私が敬愛する哲学者や心理学者は、一様にして、人生の中で必ず雷に打たれています。井筒先生やウィルバーもそうですし、おそらく、そうした人たちの本をこれまで読んできたことによって、そうした回路が自分の中で開かれたのかなと思います。

学者に限らず、偉大な芸術家の作品や音楽に触れることによって、自分の中で回路が徐々にでき上がったのかもしれないと思っています。アンテナの電波をキャッチするような仕組みを徐々に徐々に作っていって、ある時突然、雷に打たれる瞬間が来たのかな、という風に考えています。

コーチの影響力

“コーチがそういう雷に打たれる経験をしていればしているほど、クライアントに与える影響というのはやはり強いんじゃないかなと思います”

加藤:私たち各人の中でそうしたビッグバンのような現象が起こると思っていて、そしてそれが派生していくと思うんですね。誰かがビリヤードの球を突いて、一旦その形を壊して、その後にまたどんどん突いていく、というような連続的なプロセスが起こると思っています。なので、越智さんの先ほどのお考えに賛同しています。恐らく理論的には、雷に打たれるような経験を他の人に経験していただくことは、不可能じゃないと思っています。私たちに降りかかる雷というのは、派生する現象だと考えているからです。

溜:派生するんですね。

加藤:色んな要素が絡み合うことによって、雷が起こるのは確かだと思います。ですが、もし仮に、コーチがそういう雷に打たれる経験をしていればしているほど、クライアントに与える影響というのは、やはり強く、そうした経験がクライアントに派生していくのではないか、と考えています 。

“それまでコーチングを学んできたのだけど、意識って発達してゆく、そして発達に段階があるってことを知らなかったんです(溜)”

溜:なるほど、面白い話ですね。今の話や、ビリヤードのたとえ話を聞いて沸いてくるイメージは、脳の中のニューロンやシナプスが繋がりながら回路を作っていく過程です。そういうものにすごく似ているなって思います。

そしてもう一つ、派生する現象として思い出したのが、私自身が発達理論と出会うきっかけになった出来事です。ある時、現場カウンセラーの方が、私の主催した講座でセッションの見立てについて教えて下さっていたのですが、その中で、「こういう意識段階の人は、次にこういう状態になっていくよ」、という話をちらりとされたんです。それを聞いたときにも、私は軽く雷に打たれたんですよね。

それまでコーチングは学んできていたのだけれど、人の意識が発達していくとか、その発達にいくつかの段階があるっていうことを知らなかったんです。だからこそ、コーチからの問いに対して、内省が素晴らしくできる人もいればそうじゃない人もいるのだ、ということにはたと勘付いたわけです。まぁ、不勉強でもあったと思うんですが。そこで、意識の発達段階についてもっと知りたくなって、色々と探しているうちにケン・ウィルバーの書籍に出会った。そしてその道でさらに行きついたのが、加藤さんがアメリカで学んで来られた「意識の発達理論」だったんですよね。

加藤:なるほど。そのような経緯があったのですね。

溜:あのカウンセラーの方のちょっとした一言・・・それは雷っていうのか、もうちょっと微かなものでしたけど、あれが無かったら、きっとここに至れていなかったと思うんですよ。

コーチングへの希望

“意識とは発達し変化していく何かなのだっていうふうに思えたときに、コーチングに対してもっと希望が持てた(溜)”

–なるほど。一つ溜さんに聞いてみたいのが、それまで意識段階の高低に関しては、それまでは全く認識が無かったということですか?–
溜:うすらぼんやりという感じですね(笑)。例えばコーチングの現場で言うと、コーチからの問いを内省して返せる人もいるけれど、問いを咀嚼することなく反応でポンと返してくる人がいます。対話の質感として、どこか浅かったりとか深かったりとか、個人差がすごくあるなっていうのは肌感覚で感じてはいたんですよね。

すごくシンプルに言うと、感覚的にコーチングがやりやすい人、やりにくい人がいる、というように。段階に落としこんでいくと、あらかたは、一つの物事に対してあまり多くの視点を持てない発達段階にいる方のほうが、セッションがやりにくく感じるんですよね。

一方、多くの視点を持てたり俯瞰できるような発達段階にいる方のほうが、問いに対してしっかり内省して答えを返す力があるし、それによってぐっと対話が深まっていきやすいんです。

業界用語だとコーチャブルとアンコーチャブルみたいな呼び方があって、そういう違いは人によって実際にあるなと感じてはいたんですが、コーチャブルとアンコーチャブルが意識の発達段階と関係がありそうだというのは全然分からなかった。そこで発達段階を知ることで、日々クライアントさんに感じる現場感覚と理論が繋がってきたっていうのがありますよね。

–その雷がきっかけとなって、回路が繋がったんですね。–
溜:そうです。そして、そこでさらに希望が湧いてきたのが、アンコーチャブルと感じられる状態の方でも、適切な関わり方によってちゃんと発達していくのだ、という視点を持てたことです。「今のこの方の関わりにくさは、こういう段階に起因しているものであって、それは発達し変化していく何かだ」、っていうふうに思えたときに、コーチングに対してそれまで以上に希望が持てたんです。

“コーチが本当にやっていることって何なんだろうみたいなところ。そこが腑に落ちたっていう(溜)・・・”

–なるほど。それまでコーチングが難しいかもと感じていた人たちに対して、希望が生まれたような感じなんですね?–
溜:そうなんです。それから、コーチングとは何か?って巷では色んな言われ方がしていますよね。例えば目標を達成することであるとか、夢を生きることであるとか、問題解決することであるとか。業界全部を見渡してみると、お片付けコーチングとか、ビジネスコーチング、ライフコーチングとか、色んなジャンルもありますよね。

だからこそ、私はコーチングって一体何をやっているものかというところが今一つ掴みきれてない部分があったんです。すごくざっくり言えば、「コーチングはクライアントが行きたいところに連れていく馬車のようなものである」、というオーソドックスな説明の仕方はあるんだけど、じゃあ行きたいところに連れていったら何なのか?みたいなことは、いまいちぼんやりとしてて不明瞭だったんですね。

そこで発達理論と出会って、「そうか、目標達成も、夢を生きることも、問題解決も、すべて意識が発達していくってことに繋がってるのか!」という視点を持てたときに、すごく自分の中で整理されたし、腑に落ちたんです。

つまり、コーチが本質的にやっていることって何なんだろうみたいなところ。それが腑に落ちた時に、何をどう支援したらよいか道筋がみえたし、それによって、自分にとってのコーチングの可能性が広がったのだと思います。

『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【3】~発達理論でコーチングが進化する3つのポイント~

2017.01.10

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