『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【1】~人生で雷に打たれる瞬間~

アメリカのジョン・エフ・ケネディ大学で成人の意識の発達理論を学び、『なぜ部下とうまくいかないのか』(日本能率協会マネジメントセンター)を著した加藤洋平さん。※現在は、オランダのフローニンゲン大学の大学院へ留学中。

コーチングとは、クライアントさんに寄り添い、その意識の発達を促すものであるという観点でとらえるなら、加藤さんが学んできた発達理論はコーチング業界に、非常に画期的なフレームを提供してくれるものと言える。そんな加藤さんが、どのようないきさつで発達理論と出会ったのか、また、コーチングと発達理論、その未来と可能性を聞いてみた。対談4回シリーズの第一回目。

2017年 Life with Coachというサイト上で公開していたものを、こちらで公開しております。

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◆インタビュアー:越智孝之

◆対談者:溜 香世子(アウェアーズ合同会社代表)

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心理学への目覚め

“人間が持っている目には見えない心の機微を、一切わかっていないなということに気づいた瞬間がありました”

—まずは、加藤さんが今の道に進み始めたキッカケをお伺いしても良いですか?—
加藤:最初のキャリアでは、経営に関するコンサルティングをしていました。当時の私の日々の仕事は、数字を見ることや法律を見ることだったんです。私は国際税務コンサルティングのコンサルタントをしていて、日本の多国籍企業の税務リスクを分析すること、あるいは国際税務に関する調査などを行っていました。そうした仕事を日々していく中で、ある時ふと、クライアント企業を訪れたときに、自分は、全て数字的な観点、あるいは法律的な観点からしかクライアントにアプローチできていない、ということにはたと気づいた瞬間があったんです。要するに、そこで働いている企業の人たちの心の動きやその会社の文化について、これまでの自分は一切気にかけていなかったなと。

—なるほど、今まで見えていなかった部分に気づいてしまったんですね。—
加藤:そうなんですよ。日々の仕事の中では、常に目に見える客観的な数字のようなものや、税法で決定された客観的な規則のようなものしか見ていませんでした。そこで働いている人間が持っている、目には見えない心の機微が一切分かっていないな、ということに気づいた瞬間がありました。

“なぜ自分が発達理論に関心を持ったのかが分かるエピソードが、幼少期の頃を遡ればたくさんあったな、と”

—そうすると、それまで心理学的な興味が無かったということですか?—
加藤:それは本当に素晴らしい質問で、今振り返ってみると、実はその前にも心に対する関心は、ちらほら見えていたことがやっぱりあったんですね。大学時代、当時の私は経営学と経済学を学んでいて、特に金融工学や財務諸表分析のようなクラスばかり履修していました。そのような学生だったのですが、二十歳の時に、なぜかわからないのですが、井筒俊彦先生の『意識と本質』という書籍を購入していたんですね。井筒先生の『意識と本質』は、まさに発達理論そのものを扱っており、非常に優れた書物だと思います。この書籍は、特に仏教的な観点やイスラム教の観点から、人間の意識に迫っており、そのような本を二十歳の時の私が手に取っていたというのは、今振り返ると、その時にも何か心に関する関心というのがあったのかもしれない、と思っています。

人間の意識の発達に関して、なぜ自分が関心を持ったのかが分かるエピソードが、幼少期の頃まで遡ればたくさんあるな、ということを最近になって気づくようになりました。

—その興味が、直接的に目指したい形として出てくるのは、さっきの地点だったんですね。—
加藤:そうなんですよ。ですので、発達理論を学術的に探究したいと思うきっかけとなった、社会人時代におけるエピソードのところから説明を始めさせていただきました。

—さっきの瞬間までは金融の方面でキャリアを積んでいきたいっていう気持ちのほうが、表面上は強かったと…。—
加藤:ええ、そうですね。表面も内面も全てですね。数字を分析すること、特に企業の価値を財務諸表から測ることに知的興奮を覚えていましたし、金融工学の授業で扱うブラック・ショールズ・モデルのような、ああいう物理方程式を活用したものを見て、すごく興奮していた自分が大学時代にはやっぱりいたので。人間の心を扱うことになるとは、当時は一切思ってなかったですね。

人生の中で雷に打たれる瞬間

“雷に打たれる瞬間っていうのがあると思っていて。その一つがまさに、その瞬間だったのかなと思います”

—それはすごい転換ですね!—
加藤:そうなんですよ。社会人になって、これまでの関心事項とは対極に触れる形で、人間の心に関心を持つ自分がいたんです。それに気づいた瞬間に、いてもたってもいられなくなりました。実際に、クライアント企業のところに行って、自分のオフィスに帰って来た時に、いてもたってもいられなくなり、会社を飛び出したんですね。当時は大阪で勤めていて、淀屋橋というビジネス街の一角にジュンク堂さんがあり、オフィスに戻ってきからすぐに、ジュンク堂さんに足を運び、心理学書コーナー、哲学書コーナーに一目散に向かって行ったんです。わき目もふらず向かって行って、全ての本の背表紙を眺めていた時に、偶然アメリカの思想家であるケン・ウィルバーの書籍と出会うことになったんです。

—もう一回確認してもいいですか?ウィルバーの本の背表紙を見るまでと、さっきの気づいた瞬間からの時間って、どれくらいだったんですか?—
加藤:そうですね・・・時間に換算すると、クライアント企業のところで気づきを得て、そこから自分のオフィスに戻ってきたので、数時間とか、それくらいの時間でしょうか。

—数時間!!!気づいた瞬間から行動を起こしたってことですよね!?—
加藤:そうです。自分のオフィスに戻ってきたら、すぐに本屋さんに行こうと思っていました。

—それは本当にすごい気づきだったんですね。即座に行動しなきゃいけないくらい・・・—
加藤:私たちにはそういう瞬間ってあると思うんです。雷に打たれる瞬間と言いますか。私にとっては、まさにそれが雷に打たれる瞬間だったのかなと思います。偶然にも、雷は連続してやってきました。クライアント企業のところで気づいた雷と、オフィスに戻ってから本屋さんに行って、ウィルバーの書籍を手に取って、「ああこれだ」と感じたときの雷。留学を決意しようと思ったのは、ほぼその瞬間でした。

—声を失うほどの衝撃を受けております(笑)—
加藤:衝動的ですよね。一見すると、ロバート・キーガンの発達モデルで言うところの段階2的な行動です(笑)。

—いやいや、そうとも言い難いところもありますけどね(笑)。日々のもやもやしているものが溜まりに溜まって本屋に行ったときに、ウィルバーの書籍に出会って・・・、というニュアンスかと思ったんです。—
加藤:あぁ、ちょっとそれとは違うと思います。多分もやもやは、見えないところであったかもしれないんですけど、あの時の自分はもやもやしたものをそれほど感じていませんでした。ですが、もしかすると、目には見えないもやしたものが実は存在しており、それが一気に凝縮されて、一つの凝縮体が自分にぶつかってきた感じだった、と言えるかもしれません。その結果として、そうした衝動的な行動を連続的に行ったのかもしれない、と思います。そんな思い出がありますね。

即座に退職、留学を決意し、即行動

“ジョン・エフ・ケネディ大学のホームページを調べ・・・航空券の予約状況をチェックするという一連の流れは、ほぼその日とその次の日の間に行っていました”

—それほどの雷だったわけですね。で、そのまま留学に向けて舵を切っていったんですか?—
加藤:そうですね。本当にそこも、かなり衝動的だなと思っています。当時はまだ、会社勤めをして一年経ったか、経っていないかぐらいだったにも関わらず、ウィルバーの『万物の理論』という書籍とジュンク堂で出会った瞬間に、ウィルバーの理論が学べる大学がカリフォルニアにあると知り、その大学で学びたいという抑えられない思いが溢れてきました。

オフィスに戻った時には、ジョン・エフ・ケネディ大学についてパソコンで調べ、そこで退職を決意しました。今振り返ると、これも衝動的ですよね。そこからのアクションは、本当に早かったと思います。留学を決意して、当時の私は日々の仕事の中で英語を読むことはあったのですが、話すことや聞くことはそれほどなくて、TOEFLの対策をしなければいけない状況でした。そのため、ジョン・エフ・ケネディ大学のホームページを調べ、TOEFLのスコアの基準を見て、TOEFL対策の勉強をすぐに始めました。

そして、その年の夏休みに、ジョン・エフ・ケネディ大学を見学しに行くための航空券の予約状況をチェックする、という一連の流れは、ほぼその日とその次の日の間に行っていましたね。

—それは、はやい・・・。—
加藤:当時を振り返ると、自分のアクションには若さが見られますね(笑)。後先考えずに、アメリカに飛び込む決断をしていましたから。

—本当に素晴らしい行動力だと思います。そこまでなかなかできる人は少ないですよ。で、実際に留学プランはスムーズに進んだんですか?—
加藤:そうですね。最短のタイミングで留学が実現しました。TOEFLの試験は苦戦しましたが、何とかスコアも揃い、その年の夏に大学を訪れて、学部長と直に話をしたことが大きかったですね。そのおかげで面接試験をパスしてもらうことができ、選考が速やかに進んだのかな、と思います。

—聞けば聞くほど、出会うべくして出会った感がすごいですね。—
加藤:ありがとうございます。

『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【2】~コーチと発達理論~

2017.01.10
加藤さんの留学体験記の詳細はこちらに記録されております!ジョンエネフケネディ大学留学体験記

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